No.22 5年後の我が社の市場は右肩上がりか

あらためて2011年を振り返ってみると、震災復興、原発問題、欧州危機、デフレ脱却、広がる格差、TPP参加是非、年金問題、税と社会保障の一体化などなど、本当に様々なことがありました。いずれの問題も冷静に眺めてみると、3.11の震災自体は別にしても、「まさかそこまでは無いだろう」という甘さか、「既得権益の争奪」によって全体最適の視点でリーダーが決断できなかったという「過去」にその要因があるようです。

「社長の最大の役割は事業の方向づけである」スター精密の佐藤社長の言葉です。スター精密の現在の稼ぎ頭の工作機械部門は、1950年代の創業から10年の間に脱下請けを様々な策を講じて育んだ事業です。創業から10年経った1960年代、造ればいくらでも売れる時代に、海外への販路開拓を始めました。海外に販路を求めないと10年先生き残れないという危機感から、10年かけて「儲かる輸出」を確立し、1970年代には生産拠点も海外に確立しました。よそでは、今日の売り上げ、今日の利益に満足し、血眼になって節税策を講じている間に、スター精密は10年後の我が社の市場を本日ただ今開拓していたわけです。きっと今頃は2020年あたりを想定して業態を開発していることでしょう。先見の明があったという言葉で片づけてしまえばそれまでですが、見るべきものをしっかり目を瞑らずに見ていたということなのでしょう。

もうすぐ新年度を迎える会社も多いと思いますが、新年度の計画を練るにあたっては、過去5年間の「売上」と「粗利益」を業態や商品、支店毎に左側から古い順に数字を並べ、次に未来5年間の「売上」と「粗利益」を過去5年間のすう勢比から辛口で見積もった表をまず作ってみて下さい。これに今の固定費を当てはめれば、5年後、我が社が十分稼げるか、はたまたダメかは考えなくてもわかります。

ここからが社長の腕の見せどころ。新年度を、5年後の新たな稼ぎ頭を確立するための初年度に設定して、全社をあげて取り組むか、相変わらず日々の売り上げに終始するか。5年後の未来は現在の決定ですでに決まっています。

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