No.14 悲観的に考え、楽観的に行動する
最近の企業の倒産状況を調べてみると、業歴30年以上のいわゆる老舗と呼ばれる企業が実に3割を占めるまでになりました。15年前は1割程度でしたから「強いものが生き残るのではない、変化に対応したものが生き残る」というダーウィンの進化論が、まさに経済界の現実の数字にまではっきりと表れるようになりました。
国民の世帯収入は、年収800万以上の中流層がこの10年間で2割減少、年収400万以下の世帯は10年間で1.5倍に増加。企業数はこの5年間で6%減少、上場企業数はこの3年間で8%減少、それでも需要と供給のバランスがとれず、欠損企業は実質8割近くというのが現状です。グローバル経済、情報革命、人口減少、少子高齢化、労働生産性の低下、政府の資本主義とは到底思えない政策、震災等の要素を加味すると、この傾向は未来に向かってますます加速すると仮定できます。
こんな話ばかりしていると、あんまり悲観的に考えない方がいいんじゃない?と言われそうですが、経営者なら、自社の事業領域に関係する様々な環境の変化を悲観的にとらえておく必要があるでしょう。今儲かっている会社は、現在のこの状況を3~5年前に悲観的に考えて手を打った会社です。「なんとかなるでしょ」と楽観的に考えるのは、手を打った後の話で、初めから楽観的に構えていて今のやり方を何も変えなければ、数年後業歴30年以上の会社の倒産が半分なんてことにもなりかねない気がします。
「人事を尽くして天命を待つ」ということわざがありますが、人事を尽くさずして天命に期待できるほど楽な世の中ではありません。
社員は今日実った果実を収穫し、幹部は来年のための種まきをする。社長はといえば、3~5年後の天候を悲観的に見極めて、今日ただ今から地質の変更に着手する。社長が今日の収穫だけに夢中になっていたら、近いうちに果実は間違いなく実らなくなるでしょう。悲観的に考え楽観的に行動する、社長に必要なクセだと思います。