No.2 顧客はあなたの会社の「何」を買っているか~高付加価値経営による生産性の向上を目指して その2~ 【平成20年10月】
前回(平成20年7月)では、高付加価値による生産性の向上は、こちらの事情を一切無視して、徹底的に「相手の側から見る」ことだとお伝えしましたが、もう少し踏み込んで、相手の側から「何を見るか」について考えてみたいと思います。
建築工具の電動ドリルを製造販売していた会社が、世にレーザー光線のドリルが登場して、販売不振に陥りつぶれてしまったという例があります。うちの売り物は電動ドリルだからレーザードリルは作らないという社長の姿勢に問題がありました。
ここで私たちが学ぶべきところは、顧客は電動ドリルを買っていたわけではなく、穴を開けるという「機能」を買っていたということです。穴を開けるという機能をたまたま満たしていたものが電動ドリルだっただけで、顧客は電動ドリルそのものが欲しかったわけではありません。
体重計を販売していた㈱タニタは、顧客は体重計で何を計っているのか(どんな機能を買っているのか)という発想から、あの有名な体脂肪計が生まれました。顧客は体重計で「体重」を計っていたわけではなく、体重計を使って「健康」を計っているという気づきから、大ヒット商品の体脂肪計が開発されました。㈱タニタの理念は、「我々は、「はかる」を通して世界の人々の健康づくりに貢献します。」です。
企業でも消費者でも何らかのモノやサービスを購入する場合、そのほとんどがモノやサービスそのものではなく、そのモノやサービスを手に入れることによって得られる「機能」を買っています。売る側から見たら売り物は電動ドリルだったり体重計だったりしますが、買う側(相手)は、「穴を開ける機能」だったり「健康を計る機能」を求めているわけです。
新幹線に乗る人は、目的地にとにかく早く着くという「スピード」を買っています。ディズニーランドに行く人は、日常生活で味わうことのない「空間」を買っています。
相手の側から「見るべきもの」は、「顧客が求めているうちの機能」であり、この視点から新たに業態を開発していくことが高付加価値の絶対的な条件だと思います。
マーケットが縮小傾向にある現在、生産性向上のキーワードは量から質への転換、企業内部の効率化・合理化から企業外部(顧客)への価値をいかに高めていくかの勝負です。
私たち経営者の役割は、顧客はうちのどんな機能を求めているのだろうか?という本質を掴むためにお客様を回り、全身全霊でお客様の声なき声に耳を傾け、自社の顧客から見た機能を更に高めていくことだと思います。