【毎期5千万円の赤字を出していた繊維メーカー】
~「値決め」が解決のカギ~
目次
背景
創業100年の繊維メーカー、年商5億円、この数年は毎年5千万円程度の赤字を続け、創業から積み重ねた自己資本10億円も4億円程度にまで落ち込み、資金繰りも返しては借りてを繰り返して非常に厳しい状況。過去コンサルタントを入れて、KPI(キー・パフォーマンス・インジケーター:重要業績評価指標)を設定し、目標達成のためのPDCAサイクルを導入したが黒字転換はしなかった。
現状分析
社長にヒアリングしてわかったことは、
- 社員1人当たりの生産性(稼ぎ高)……年450万円
- 正社員の給与の平均額……280万円(地域性もあるが決して高くない)
- コスト削減できそうな大きな経費はない(無駄遣いはしていない)
- 社員の方々は非常に礼儀正しく、仕事にも一生懸命取り組んでいる (社員がサボっているわけではない)
- 工場の生産現場は現在の社員数に応じた100%の稼働率 (これ以上受注が増えれば増員が必須)
結果、営業サイドで掲げた受注目標(数量目標)をPDCAサイクルで達成しても、どう試算しても黒字にはならなかった。この会社の場合、最先端の経営手法を用いて「売上数量」をどこまで伸ばしても黒字に転換することはなく、解決策は「値決め(粗利益率)」だった。
改善策は?
現状の売上数量で、利益トントンベースにするには、全商品で概ね8%の値上げが必要だった。社長にその旨を伝えると、この数年原材料費が上がっても、ずっと値上げはせずにきたので可能ではないかという回答。
早速、製品ごとの価格設定、お客様ごとの値上げ要請のスケジューリング、価格変更の送付状を作成し、全社で8%値上げのモニタリングを始めた。机上で考えるほど簡単な話ではないが、努力も方向性が違っては、成果に結びつくことはない。
改善のキーワード
- 売上目標管理(売上数量管理)から社員一人当たり生産性管理へ
- 値決めと見積もり管理の徹底
- 粗利益率管理の徹底
現在は?
営業マンを交えての全商品で概ね8%の値上げ作戦を実施して、1年半後の決算では数年ぶりに黒字の決算を迎えることができた。
担当税理士コメント
値決めは社長にしかできない。
現在の値決めで目標の売上が達成できた場合、全社員がおしなべて社員1人当たり年間1000万~1200万円稼げるかどうかを客観的に試算することがもっとも大事だと思います。
どうやっても社員1人当たり年間1000万円も稼げない、または社員の増員が必要になるという結果が出るなら、現在の値決めの再考が必要。